10年前のこと

 去る 9月11日は、東日本大震災から半年、そしてアメリカの同時多発テロから10年という哀しい節目の日だった。
 10年前の 9月11日のことは、今でも憶えている。

 2001年はイチローが渡米した年で、イチローと彼が所属するマリナーズの俄かファンだった私はその時、 テレビで MLB ハイライトという番組を見ていた。
 ちょうどマリナーズの試合が放送されていた。マリナーズの守備場面だった。

 その映像が、何の前触れもなく切り替わった。
 青空を背景に、高い塔のようなビルの中腹から、もくもくと黒い煙が上がっていた。
 しばらくの間、映像だけが流れていた。音声はなかった。だから最初は、そこがどこで、何が起こったのか、 まるでわからなかった。
 やがてスタジオの画面に切り替わり、ニューヨークのワールドトレードセンターに飛行機が衝突したらしいと告げた。

 放送局は混乱していたのか、日本のスタジオとニューヨークの映像が頻繁に切り替わっていた気がする。
 そして、いつの間にかもうひとつのビルからも煙がもくもくと立ちのぼり、 やがて何度目かの画面切り替わりでニューヨークの映像が映し出された時、 ふたつあったはずのビルがひとつ、なくなっていた。

 その時、私が最初に思ったのは、
「ふたつのビルから煙が上がってたと思ったけど、勘違いだったかな?」
 というものだった。
 一瞬のうちにあんな大きなビルが崩壊してしまうなど、夢にも思わなかった。 自分の見間違いだと考えるほうがまだ現実的だった。

 やがてそれが事故ではなくテロ、それも自爆テロだと判った時、 この世にはどうしてもわかり合えない物事があるのだという現実を痛感した。
 あれから 10年が経ったが、テロを仕掛けた側と仕掛けられた側の間には、良い方向への進展は何もないようだ。

 今はまだ憶えているけれど、記憶はいつか風化してしまうものなので、 節目の年にあの時の自分のことをこうして書き留めておくことにした。

2011.09.17