しっくりリュック

 先日、誕生日プレゼントとして夫にリュックを買ってもらった。
 水族館に持って行った時に、水槽のガラスに写り込まないバッグが欲しいという私の要望によるものである。
 要望を述べた時、それならリュックだろうと夫はすぐに言ったが、正直なところ私は乗り気ではなかった。

 だって、リュックって何かダサいじゃないですか。おばさんっぽいと言うか…… いや、おばさんなんですけどね、おばさんだってお洒落には気を使うんです、一応。まだ。

 ただ、リュックが機能的であるのはわかる。
 今まで使っていたななめ掛けのバッグよりも両手が空いている感は高いし、 腰にも負担が少ないような気がする。これは腰痛持ちとしては重要なポイントである。
 使い勝手を優先するなら、リュックに勝るものはないだろう。
 しかし。
 しかし……!

 などと我儘を言いながら、鞄屋巡りをすること数日。
 夫が、棚に並んだ小さな可愛らしいリュックを見つけた。
 チョコレート色の、お洒落にも気を使っていますよという風情のリュックだった。
「ほほう」
 などと呟いて、私はそれを背負ってみた。
 そしてその姿を店の鏡に映してみて、驚愕した。

 ……何これ似合う。

 これまで生きてきて、鞄類に似合う似合わないがあるなどとは微塵も思っていなかった。
 しかしそのリュックは、恐ろしいほど私に似合っていた。
 夫が感心したように言った。
「異様なほどしっくりきてるな」

 ……やっぱり似合うんだ。

 私の気のせいではなかったらしい。
 これはもう、運命かもしれない……などと思ったりもしたが、即決はしなかった。 やはりリュックというのが少し引っ掛かっていたのだ。
 が、他を探してみてもあのリュックよりいいものはないようにだんだん思えてきて、結局は購入を決めた。

 小さめだが、思ったより容量があって仕切りも多く、今まで使っていたバッグよりもたくさん入る。 背負うのも楽。
 当然のことながら、水族館のガラスにも写り込まない。これはいい買い物をした。大事に使おう。

 チョコレート色のリュックは私のお気に入りになった。 リュックはダサくて嫌などと言っていたことは既に忘却の彼方である。
 そのお気に入りを背負って、行きつけの美容室に髪を切りに行った。 もう 6年以上通っていて、店長とは一緒にライブを見に行く仲である。
 その店長が、私が背負っているリュックを見るなり言った。
「なんかすごい……誂えたみたいに似合ってますね」

 ……誰が見ても似合ってるのか……!

 もしかしたら、私は生涯のパートナー的バッグに出会ったのかもしれないなぁと思ったことである。

2010.09.17