だって読めちゃったんだもの

 昔、会社勤めをしていた頃の話。

 会社の健康診断で、視力検査をした。
 視力検査というのは、上を向いたり下を向いたりしている「C」のようなマークを見、 そのマークがどちらを向いているか、要するに円の切れ目がどこにあるかを申告して視力を測るのが一般的であろう。

 ところが、そのとき私が覗き込んだ視力測定器には「E」のようなマークが表示されたのだ。
 やり方は「C」と同じ、「ヨ」とか「山」とか表示される記号のどこが開いているかを、 左とか上とか言って答えればよい。
 冷静に考えればすぐにわかることであるし、開いている部分が下であったならあんなことにはならなかっただろう。

 しかし不幸なことに、最初に表示されたマークは「E」だった。
 表示されるのは「C」だと思っていた私は、予想外のマークの出現にちょっぴり焦っていた。
 そして、忘れてはならないのは、視力測定には文字を読ませるタイプもあるということだ。
 マークを凝視した私は自信満々に言った。

「イー!」

 翌年の健康診断。
 視力検査場の壁に「開いている方を言って下さい」という張り紙がしてあった。

2010.04.05