雨女返上祈願

 その昔、私は晴れ女だった。行楽晴れ女。
 遊びに行く時は、いつも晴れ。

 それが、水族館に行くようになったここ数年はどうしたことだろう。 晴れたのはわずかばかりで、あとは雨、もしくは曇り。
 最初に行った新江ノ島水族館が雨のち曇りだったことに始まり、 これまで 6回行った鴨川シーワールドでは雨に降られなかったためしがない。
 雨なら行くのやめりゃいいじゃないかというむきもあろうが、我が家の場合、有給を使って平日に行くことが多く、殊に鴨シーの場合は泊まりがけで行くので一ヶ月前にはホテルの予約を済ませてしまっている。おいそれと雨天中止にはできないのである。

 そういう次第で、我が家は水族館用にとレインコートを買った。 最初はビニールの安いやつ。次にはもっとしっかりしたやつを。
 こういう物を買った途端に降らなくなるというのはよくあるパターンだと思うし、 期待していた部分も少なからずあるが、哀しいことに我が家の場合、これが実に役に立ってくれている。

 いつから私は雨女になってしまったのだろう。
 わからないけれど、晴れ女でなくなった瞬間というのははっきり憶えている。

 スキーだ。
 もう十数年以上前のことになるが、一緒にスキーにいった友人の中に、
「私がスキーに行くと、なんだかいつも吹雪くのー」
 という吹雪女がいたのだ。

鴨川シーワールド

垂れこめた雲。荒れる海。でも一番いい天気。

 晴れ女と吹雪女の戦いは、吹雪女に軍配が上がった。
 その時から、私は晴れ女ではなくなった。

 そして流れる時の中で、私はいつしか雨女に変貌していたのである。
 水族館ばかりではない。月に一度、病院に行く日に限って雨が降る。台風まで来る。
 もう勘弁して。

 先月末、我が家は鴨川シーワールドを訪れた。当然のごとく雨に降られたが、しかしそれは、 ここ一年半の中で一番良い天気であった。
 何しろ前回は、こんな天気で営業するのかと心配になるような悪天候だったのである。 その時に比べれば、何とかレインコートを着ずに済ませることができた今回は「すっげーいい天気だった!」 と言っても過言ではない。ウソ。さすがにそれは過言。

 ただ、「前回よりも今回のほうが天気が悪い」というのがこれまでずっと続いていて、 ようやく「今回のほうがマシ」となったことに、私は大きな希望を見出している。
 私は雨女の山を越したのではないか、と。

 そんな山があるのかどうかわからないが、とりあえずそうした思い――雨女返上への祈りを込めて、 この文章を綴ってみた。

2010.03.13